第5回:いやなことがあっても常に笑顔(ハンガリー/ギリシャ編)

「50か国をめぐって教えてもらった世界の幸せ」では、これまで幸せの上位国を中心に見てきましたが、今回は新たな視点で、ランキング上位ではないものの実際に訪問した2か国で気づかされた「幸せ」についてご紹介したいと思います。

ハンガリー編

1か国目は、ランキング75位のハンガリーです。騎馬遊牧民族を起源とし、十二支を使っていたり、姓名の順で名乗るなど東洋文化的な側面が随所に見られます。なんだかアジアと深いつながりがありそうですね。

もう一つハンガリーで興味深いのは温泉です。首都ブタペストは、100を越す源泉と50近くの浴場をもつ世界有数の温泉都市です。紀元前のローマ時代から温泉の効能が知られ、およそ2000年前、この地で温泉を発見した古代ローマ人たちが培った社交場としての温泉文化を独自に発展させたようです。

さて、ハンガリーの幸せについてです。ワールドハピネスレポート2017によれば、東ヨーロッパのハンガリーは75位で、周辺国であるチェコの23位、オーストリアの13位とは大きく差があります。実際に、ハンガリー、チェコ、オーストリアの中欧3国を巡ってみて気になったのは、ハンガリーだけが突出して幸福度が低いということです。

調べてみると、その原因は消費税が27%と世界一高く、そして塩分やカロリーの高い食品に課せられるポテチ税や、犬を飼った人が納める犬税など、ありとあらゆるものに税が課せられる一方で、国民に還元されないために、国民の不満が限界にきていることが原因の一つと推測されます。

でも本当にそうなのか、どうしてもその真実を知りたくて、現地の人々に聞いてみました。すると返ってくる答えはみなさん共通して、戦争で負け続けたハンガリーの歴史が原因だという答えが返ってきます。

第一次世界大戦で敗戦国となり、第二次大戦当時はナチス・ドイツの強要で枢軸国とされ、やはり敗戦国となります。さらに1945年、降伏したナチス・ドイツに代わって、今度はソ連に支配されてしまいます。このように、戦争に負け続けた歴史を背負っているから前向きになれず、悲観的になっているというのです。幸福度ランキングが低い話は現地でも話題になるそうで、ハンガリー人が後ろ向きでいることは残念だと言っていました。

いろいろとお話を伺った中の一人に、とても興味深いお話をされる方に出会いました。日本語が堪能で、笑顔が素敵で、ホスピタリティにあふれるハンガリーの女性。とても前向きな発言をされる方だったので、思わずその訳を聞いてました。すると、その方は、現地の日本の自動車会社に勤めていることがわかりました。日本のことが大好きで、「私が前向きに思われるのは、もしかすると、一緒に働く日本人の前向きさの影響を受けているのかもしれませんね」とお話されていました。日本人が前向きで、かつ、よい影響を与えている・・・その話を聞いて、なんだかうれしくなりました。

ギリシャ編

そして、もう1か国ご紹介したいのは、ギリシャです。ギリシャというと、神話、星座にまつわる神々の国であり、また、たくさんの哲学者を生んだ国でもあります。地理的には、エーゲ海に囲まれ、人々ものんびりして、幸せなイメージなのですが、実は幸せランキングは87位と意外と低いのです。

ギリシャというと、個人的に浮かぶイメージはマラソンです。紀元前450年、ギリシャがペルシャと戦った「マラトンの戦い」の勝利を伝えるために、フィディピディスという兵士がマラトンからアテネまで走りぬいたことがマラソンの起源とされています。ギリシャに訪れたのは、このマラトンとアテネをつなぐコースを是非体感したいと思ったからなのですが、もう一つの目的は、ギリシャの幸せについてのリサーチです。

私がギリシャに訪れたときは、2015年。ちょうど金融危機が報じられたころです。

2015年6月、IMF(国際通貨基金)がギリシャに対する16億ユーロの融資について返済がなされずに延滞状態にあると発表し、事実上の債務不履行に陥りました。金融支援を続けていたEUも支援を打ち切ることを決定し、結果としてギリシャはIMFにもユーロ中央銀行にも借金をしたまま立ち往生という状況となりました。

私が訪れた時期は、旅行者を除き、現地の人は預金が拘束され、毎週数万円しかおろせない状況が続いており、非常に苦しい生活をされていました。

そのような状況の中で、非常に大きな気づきがある体験をしました。

それはまさにマラソンの時です。アテネマラソンは、さすがマラソンの起源となるだけあって、30キロ地点までずっと上り坂のなかなかタフなコースでもあります。

参加したとき体調を崩してしまっていたこともあり、ゴールの目前でかなり苦しくなり、足が止まってしまいました。完走できるか不安になっているときに、ギリシャ人ランナーが駆け寄ってきて、笑顔で、そして肩を組んできて、励ましてくれて、「ゴールは後すぐだから一緒に走ろう!」と、大変な勇気をもらいました。ゴールまでの間、何度かギリシャ人が近寄り同じような場面が繰り返されました。なんて温かい人達なんだろう……。世界中をいろいろと走ってきましたが、今までない体験でした。経済破綻して苦しい中にいる状況にもかかわらず……。ギリシャ人の温かさ、やさしさを感じました。

マラソンが終わって改めてよくギリシャの人々を見ると、深刻な顔をしている人がおらず、みな笑顔である気づきました。なぜなのでしょうか?

経済破綻した国だけに、ギリシャ人は余裕がなく、サバサバしていると思っていただけに、不思議でした。さっそく、彼らに聞いてみると「ギリシャでは、観光産業ってすごく重要なんだよね。外国の方がギリシャに来てくれるから僕たちはハッピーになれる。もし自分たちが笑顔でなかったら、観光客が来なくなってしまうでしょ。それに、将来のこと考えて不安なことばかり考えてもしょうがないよ!」とあまり先のことは考えず、今にフォーカスしていて、皆、とても前向きな発言でした。

2つの国で出会った方々から学んだのは、凹むような苦しい環境や辛い状況でも自分自身が流されず、それを客観的にとらえる。そして、相手に当たったり、いやな感情を外に出すのではなく、ポジティブな感情や笑顔を表に出すことで、幸せにも、元気にもなれるということです。どんな時でも自分次第でスイッチの切り替えができるものなのだと感じました。

そして、前向きな人と過ごしたり、環境に身を置くことで、幸せにシフトすることができるんだと学びました。

(幸せ冒険家 小泉大輔)

第4回:つらいことがあっても気にしないタフなメンタル(イスラエル編)

今まで、ワールドハピネスレポートの上位にランキングされている北欧の国々を見てきましたが、北欧以外でも興味深い国がランキングされていることに気づきました。その中でも特に気になるのが中東のイスラエルです(2017年は11位にランキングされています)。イスラエルというと、パレスチナ問題や中東地域での紛争などがメディアで報道され、幸せとはちょっと縁遠いのでは、と思ってしまいます。とくに昨年末は、米国のトランプ大統領が首都をエルサレムと認定したこともあり、現地の混乱が毎日のように報道され話題になりました。イスラエルは本当に幸せなのか? 是非、イスラエルの幸せについて生の声を聴いてみたいと思い、昨年末イスラエルに向かいました。

イスラエルは、日本の四国よりやや大きい面積に人口約800万人が暮らし、人口構成はユダヤ人が75%、アラブ人が20%、その他5%となっています。また、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の3大宗教にとっての聖地である東エルサレムやヨルダン川西岸地域、それにガザ地区をめぐっては、いわゆるパレスチナ問題を抱えています。

地理的には中東に位置しますが天然資源に乏しく、サウジアラビア、イラン、イラクなどと異なり、産油国ではありません。イスラエルの資源は、まさに人です。物理学者のアインシュタイン、映画監督スピルバーグ、ミュージシャンのボブ・ディラン、ヘッジファンドのジョージ・ソロス、資本論のマルクス、心理学者のフロイトなどなど、各界で活躍しているユダヤ人は多いですね。

また、国民一人当たりのノーベル賞科学3賞授賞者数、博士号保有者数、研究開発費、ベンチャー企業数などは世界トップクラスで、ドローンやサイバーセキュリティ、自動運転技術も、イスラエル発の技術を目当てにアップル、グーグル、マイクロソフトなどがこぞって進出するほどの魅力的な国です。経済成長も著しく、1人当たりGDP(国内総生産)では、2014年以降日本を上回っています。

イスラエルはなぜ幸せか?

一方で物価は非常に高く、消費税は17%です。日本以上に格差は広がっており、ユダヤ人とアラブ人の緊張関係と合わせて、一見すると、決して幸せとは言えないように見えます。

そのような状況なのに、幸福なのはなぜでしょうか? イスラエルに行き、その現状を見ながら、現地に長年住んでいる方々にお話を伺う事ができました。どうやら、そこには、ユダヤの歴史的な背景や、国の教育方針が深くかかわっているようです。

歴史的な背景

ユダヤ人は、2000年前にローマ帝国に支配され、国を失いました。そして、この2000年もの間、行き場を失い、迫害を受け続けてきました。その後、自分たちの王国があったところに国を復活させたいという祖国への希望を持ち続けている中、やっとのことで1948年にイスラエルが建国されます。このように、苦しい中で耐え続けた歴史から、基本的に期待をあまりしない、そして辛いことがあってもちょっとやそっとでは、落ち込まないタフさがあります(自殺率もほぼゼロだそうです)。

ヘブライ語に「フツパー」という言葉があるのですが、この意味は「図々しく、無神経、厚かましい、信じられないほどの度胸、恐るべき根性、無遠慮で傲慢」だそうです。長年祖国がない中で生き抜くために鍛えられた、ユダヤ人の特徴だといいます。

実際ユダヤ人と話をしていると、相手にうるさがられるほど積極的に自己主張します。日本人のように素直に相手の話を聞いて納得するすることはまずなく、話の最中でも平気でさえぎって質問したり、自分の話を始めたりするなど、メンタルもかなりタフと感じられます。

このため、通常の人が苦しいと思う事にも苦しみを感じにくく、まるでゴムのように、何を言っても動じないタイプの人が多いといいます。だからこそ幸せを感じやすいのだそうです。

さらに、現地の人のお話では、今まで国を持てなかったところから持てたという喜びと安心感、そして、苦しい中をともに生き抜いてきた同志として、世界中で離れて活躍しているユダヤ人同士の結束力の強さも、幸せ感につながっているようです。

イスラエルの教育

もう一つの要因は教育です。苦しい中でどのように生きていくかを学んだ国だけに、国も「自主自立」、「失敗を恐れず変革を続ける」というビジョンを掲げ、教育に力を入れてます。そして、ユダヤ人の家庭はみな教育熱心だそうです。

イスラエルの教育の方針のキーワードは、「何とかなる」「できないはずがない」「失敗に対する寛容さ」「楽観主義」だそうです。小さい時から執拗に「なぜ?」を連発し、なんでも質問する文化で、子供を徹底的にほめ、叱らないそうです。

このような教育スタイルから、なんとかやれるという強いマインドが磨かれ、将来に対する不安を感じにくいのではないかと思いました。

帰国の直前に、幸せに関するもう一つ大事なヒントを発見しました。それは、3.1という高い出生率です(日本は1.44)。この出生率の高さの理由には、ユダヤ人が子孫繁栄してゆく家族を築くことをとても重視しており、家族が仕事よりずっと大切だと考える人が多いことを表しているといいます。実際、安息日には家族で過ごすことが多いため、日本人とは比較にならないほど夫婦や家族で過ごす時間が長いそうです。

イスラエルが幸せな理由を探していて見つけた、「何とかなる」「できないはずがない」というキーワード。そこには、日本人の特長といわれる「協調性」「謙虚」「規則を守る」などの言葉は見当たりません。それはまさに、厳しい中を耐え抜くための知恵でもあったと気づかされました。

繊細で、小さなことを気にしてしまいがちな日本人からすると、別次元の話に聞こえるかもしれませんが、最近注目されているアドラー心理学にあるように「嫌われる勇気」が、幸せに生きるための一つのヒントなのかもしれませんね。

現地に来て初めて、気づかされる幸福感でした。

(幸せ冒険家 小泉大輔)

 

第3回:恵まれていると思って楽観的に考える!(アイスランド編)

「50か国をめぐって教えてもらった世界の幸せ」では、ワールドハピネスレポート2017で第1位になったノルウェー、第2位になったデンマークの幸せについてお伝えしてきました。今回は、第3位となったアイスランドの幸せについてお伝えしたいと思います。驚くのは、アイスランドはリーマンショック後に経済破綻してしまったにもかかわらず、幸福度が高いというところ。これまでの北欧諸国とはまた異なる幸せがあるのではと思い、その秘密を探りたくて、アイスランドに訪問してきました。

アイスランド共和国は、ノルウェーの西約1000キロに位置する島で、北極圏に近い北緯65度くらいのところにあります。北海道より2割ほど大きい島にもかからず、人口はたった32万人。8世紀ごろに北欧のバイキング達によって発見され、たまたま発見したのが冬で、島全体が真っ白だったために、アイスランドと名付けられたそうです。

日本人にとっては、あまり馴染みがない国かもしれませんが、冷戦の終戦地となったのは実はアイスランドの首都レイキャビックです。1986年にソ連のゴルバチョフとアメリカのレーガン大統領が会談し、冷戦に終止符が打たれた平和の象徴の場所でもありますね。

そして、アイスランドは、NASAがかつて月面着陸の訓練をしたり、最近ではSF映画の撮影場所として注目されたり、まるで、別の星に来たかのような異次元の空間を思わせます。地球のマグマの噴出地点で至る所に温泉が湧き、世界最大といわれるブルーラグーンと呼ばれる温泉や、オーロラ鑑賞も体験できる好奇心を満たす国としても注目が集まる国です。疲れを癒し、エネルギーを充電するために、とっておきのふさわしい場所ですね。

高福祉国家のアイスランド

アイスランドも北欧諸国にみられるような、高福祉国家の特徴があり、医療費も無料、16歳までの義務教育期間の授業料も無料です。特徴的なのは、育児休暇が充実していること。法律によって、その期間は9か月と定められ、父親が3カ月、母親が3カ月、そして残り3か月を父親、母親のどちらかが選べるというユニークな制度が導入されています。仕事に拘束されず、家庭や自分の生活を優先できるようになっていますね。

一方で物価は高く、消費税は25.5%と、ハンガリーの27%に次いで、世界で2番目に高い国です。ペットボトルのお水は約400円、ワインは1杯約2000円もします。これまた、高福祉国家の特徴ですね。

その他、アイスランドがダントツにすごいなと思うのは、
・男性の平均寿命(81.2歳)は世界第1位(2015年)
・歴史上軍隊をもったことがない
・電力は100%クリーンエネルギーという実験国家
・治安がとてもよく、夜中に一人で女性が歩いていても、不審な人に襲われる心配もない
・政治家と国民の距離が近く、温泉で大臣と国民が直接話をすることもある
などなど、特徴的なところはありますが、その中で特に興味深いのは、最近発表された「世界・男女平等ランキング2017」で、アイスランドは9年連続男女平等世界一だということです(日本は144か国の中で114位)。女性の国会議員の人数も40%以上となり、さらにクォータ制という法律が導入され、50人以上の従業員がいる企業の女性比率を40%以上にしなければならないなど、女性の活用が推し進められています。

アイスランドの金融破綻

アイスランドの幸せについて考える上で、頭に入れておきたいのは、経済破綻を経験しているということです。

もともと、アイスランドの主要産業は漁業で男性社会でした。過去にオイルショックを経験し、苦しい状況から抜け出すのにとった国の戦略は、金融に力を入れるということでした。中央銀行が高い金利を設定し、その傘下の銀行が世界中からお金を集め、それによって住宅投資や建設投資を行い、アイスランドは高い成長率を実現しました。2008年には、一人当たりGDPは日本を抜き、世界でトップ4にもランクされるなど、小国ながら、パワフルな国に成長します。ところが米国の金融危機、リーマンショックがきっかけで、心配した預金者が一斉に資金を引き揚げ、2008年に金融破綻に追いやられました。

もともとアイスランドは、1980年代に世界で初めて民主的な投票によって女性首相が誕生するほどに進んだ国でしたが、男女平等世界一と言われるほど女性活用にシフトしたのは、経済破綻したことがきっかけです。というのは、アイスランド財政の破たんについて原因を調査したところ、大手三大銀行のトップが男性だったということが原因と結論付けられたのです。そして、この3つの銀行が国有化され、そのうちの2つの銀行のトップに女性が就任します。さらに、先ほどお伝えしたように、女性の国会議員が40%を占めるほどになり、また企業の女性比率を40%以上とするクォータ制度が導入されることつながります。

アイスランドの幸せ

このように高福祉が実現し、とくに男女平等が高いレベルで実現し、女性にとっても働きやすいなど、制度面からしても幸せ度が高くなる理由はわかるのですが、わからないのは、税金も生活コストも高く、さらには経済破綻したにも関わらず、なぜ幸せなのか、ということです。

ありがたいことに、アイスランドの方々にインタビューさせていただく機会をいただきした。

共通するところとしては、皆、破綻してしまったことに悲観していないということ。中には、破綻後に住宅ローンが3倍にもなり、多額の負債を抱えてしまった方もおりました。その方でさえも、「正直それほど楽とは言えないが、過去を振り返ってもしょうがない。経済破綻を通じていろいろと学べたし、きっとこれから良くなるよ」と前向きです。

いろいろとインタビューさせていただく中、帰国が迫る1月1日に、大きな出会いがありました。

そろそろ夕食にでかけてようと出かけようと、雪の中バスを待っていた時のこと。雪が降り気温は氷点下の中、いくら待っていてもバスどころか車も一台も通り過ぎません。20分ぐらいが過ぎ、途方に暮れていると、僕の目の前に1台の車が近寄り、停車しました。そして窓が開き、20代ぐらいの若い女性が顔を出し、運転席から話しかけてきました。

「今日は、いくら待ってもバスは来ないわよ。おそらくタクシーも。町の方に向かうのだったら乗っけて行くわよ!」と。女性一人で、見知らぬ男性一人を乗せることなど日本では考えられません。とても親切な女性に感激しました。

聞くところによると、彼女は、プロのクラシック音楽のミュージシャンで、家に帰る途中ということでした。乗せていただけるだけで感謝なのですが、どうしてもこの親切な女性に幸せについて伺いたくなりました。

彼女のお話では、親戚がドイツに住んでいるようで、いろいろとヨーロッパの国の情報が彼女の耳に入ってくるらしく非常に国際情勢に明るい。

「ドイツにしたってイギリスにしたって、どこの国もいろいろな問題を抱えているでしょ。生活するにも大変そうだし。アイスランドは経済的にも厳しい状況を迎えたけど、私たちは、他の国に比べればまだましだと思う。それに、将来のこと心配してもしょうがないでしょ。今、私はとても充実しているし、幸せよ」と。

通常、比べることで幸せでなくなってしまうことが多いと思うのですが、経済破綻を経験したアイスランドでは、悲観することなく、他の国と比べても自分たちは恵まれていると、前向きに考える。そのようなものの見方が幸せにつながるんだということに気づかされました。

アイスランド人の深いところには「自然に逆らわず生きる」という意識があるようです。雨が降っても、濡れるのは当たり前という考えで、傘をささなかったり、また、火山の噴火で飛行機が欠航しても、怒りもせずに次の便を平気で待つそうです。それは、幼い時期から、自然に逆らうより自然になれることを体に教え込まれて育つからなのだそうです。

アイスランドでは、地理的に夏は白夜でなかなか暗くならないため、1日中アウトドアライフを楽しみます。日照時間が短い冬には、部屋で仲間と面白い話を競い合って盛りあがったり、また、読書を過ごして過ごすの一般的なライフスタイルだそうです(10人に1人が自叙伝を書き、本屋さんには一般の人が書いた自叙伝が平積みになるそうです)。

このように、自然に逆らわず生きる、そして、一見すると、マイナスやネガティブな事柄に遭遇しても、恵まれていると楽観的に考える。そんな知恵がある人々が住むのがアイスランドなんだなぁと思いました。

(幸せ冒険家 小泉大輔)

第2回:幸せの秘訣は、執着せず日常を楽しむ工夫(デンマーク編)

「50か国をめぐって教えてもらった世界の幸せ」第2回は、北欧の福祉国家デンマーク編です。デンマークは2017年のワールドハピネスレポートでは2位でしたが、2013年、2014年、2016年と世界一幸せな国に選ばれています。

数年前にデンマークを訪れ、現地でレストランを経営している知人や、世界で最も刺激的といわれるビジネススクール「カオスパイロット」に通いながら現地の幸せを取材されている日本人留学生の方など、いろいろな方々にデンマークの幸せについてディスカッションさせていただく機会をいただきました。

デンマークは、九州ぐらいの面積の国土に、兵庫県や北海道とほぼ同じぐらいの人口約570万人が住む小さい国です。でも、一人当たりGDPは日本の約1.5倍の約600万円と、残業がほとんどないにもかかわらず労働生産性も高く、ワークライフバランスが非常に良い国です。

デンマークと言えば、「ゆりかごから墓場まで」といわれる世界最高水準の高福祉国家で、幼稚園から大学までの学費も無料、医療費、出産費用も無料です。また、格差が少ないことでも有名で、大金持ちもいなければ貧困層も少なく5%程度(日本の3分の1ほど)だそうです。また、ホームレスを見かけることはなく、犯罪も少ないようです。

驚いたのは、王女が自転車でスーパーに買い物に行く姿を見かけることがあるということ。また、ほとんどの家にはカーテンもなく、ベビーカーに子供置き去りにしながら食事をするのも一般的だそうで、それだけお互いの信頼性が高く安心して過ごせる国であることがわかります。

でも、このようなことが実現できるのも税金が高いからで、所得税は40%~60%(日本の最低税率は地方税とあわせて、15%、最高税率は55%)、消費税は25%と、GDPに占める税金や社会保険料の国民負担率は約70%(日本は約38%)と非常に高く、みな貯金はほとんどできないといいます。これだけ高いお金を国に納めているからこそ、国民も政治に関しての関心も高く、国民の政治参加率は過去最低でも85%、高いときは、90%と、政府に対する信頼も高いようです。

たしかに、高福祉が実現して成功している国と感じられます。でも、本当にデンマークに住む人は幸せなのでしょうか。インタビューさせていただいて最初に感じたのは、“幸せ”というより、“不安はない”という意味での幸せなのでは、という印象です。

そして、さらにお話を伺う中で、3つの幸せのキーワードがあることに気づきました。

ヒュッゲ(hygee)

まず一つ目のキーワードは、「ヒュッゲ」。「ヒュッゲ」とは、ひとことでいえば「心地よさ」を表すデンマーク独自の概念です。人とのつながりを通してあたたかさや癒やし、ささやかな時間を大切にし、好きなことに囲まれて過ごすこと、を意味するそうです。

どうやら、この「ヒュッゲ」に象徴されるデンマーク流の考え方や時間の過ごし方が、個人レベルの幸福度を高めている大きな要因となっているようです。

デンマークでの一般的な就業時間は9時~4時(7時間)、残業は基本はなし、年間6週間の有給休暇があります。さらに、年に5日、就業時間内にボランティア活動をするのが決まりなど、自由な時間がつくれる国です。

また、政府の自転車政策により、自動車の価格は日本の2〜3倍のため、自動車でなく自転車が主流で、自転車に優しい街づくりが実現されていて、とても健康的です。

このようなことからも、「ヒュッゲ」が実現しているのではと思います。

ヤンテの掟(Jante Law)

現地の人とお話をしていて、よく耳にするキーワードがヤンテの掟(Jante Law)という言葉です。

「ヤンテの掟」は作家のアクセル・サンデムーセが1933年に書いた小説「A Fugitive Crosses His Tracks」の中に出てくる10カ条のルールで、小さいときに学校で習った記憶がある、というお話のようです。

1 自分を一角の人物だと思ってはならない
2 自分のことを、私たちよりも優れていると思い上がるな
3 自分のことを、私たちよりも頭がよいと思ってはならない
4 自分のことを、私たちと同じくらい価値があると想像し、自惚れに浸ってはならない
5 自分のことを、私たちよりも多くを知っていると思ってはならない
6 自分のことを、私たちよりも重要であると思ってはならない
7 自分のことを、大物だと思ってはならない
8 私たちの事を笑ってはならない
9 私たちの誰かが自分のことを気にかけていると思ってはならない
10 私たちに何かしら教えることができると思ってはならない

これらはすべて自分へ向けての言葉のようで、日本人に礼儀作法を大切にする国民性があるように、もしかすると、デンマーク人には「ヤンテの掟(Jante Law)」が深いところに記憶され、共通の国民性につながっているのではないかといわれています。

執着しない、受け入れる

基本的に、デンマークの人は、お金をかけずに楽しめるタイプでだそうで、野心的でないからあまり失望することもなく、執着せず、現状を受け入れ、満足する人が多いそうです。

よい例がオリンピックで、日本ではメダルに執着し、プレッシャーや期待が大きすぎで結局押し潰されて力を出し切れなかったという残念な結果になる事がありますが、デンマーク人ははじめからあんまりメダルは期待していないそうです。選手たちも「勝ったら嬉しいけどメダル取れなくてもよい」というゆるい感じでチャレンジすることが多いと。その方が、かえって執着せず、リラックスした分よい結果になることもあるそうです。

このように、執着せずに、毎日健康に気を配り、余裕のある生活を心がける。1日で多くのことを成し遂げるよりも、プライベートの時間を確保してリラックスすることを重視することが、幸せにつながっているようです。

あるデンマークに住む日本人の方から、以下のような本音を聞くことができました。

「日本からデンマークに移り住んでみて、デンマークの生活は正直退屈です。自分で考えてクリエイティブに過ごさないと楽しめない。でも、だからこそ、自由な時間を楽しむ工夫をするのです」

確かに、忙しい日本人からすると、時間に余裕ができたら、逆に何をしていいのか悩んでしまいそうです。でも、与えられた環境の中で、執着せず現状を受け入れ、ゆっくり、まったりとした時間を味わう、そして、心地よい生活を送るような工夫をすることで、自分流の幸福な時間を築く。

国を含め、お互いの信頼性が高く、将来に対する不安が少ないデンマーク。その中で、人生のプランを軌道修正できる自由な選択、自分の時間と家族の時間、働く時間がバランスよく取れるという意味で、本当に幸せなんだなぁと気づかされました。

(幸せ冒険家 小泉大輔)

第1回:幸せの秘訣は「期待しすぎないこと」(ノルウェー編)

HAPPY DAY PROJECTでは、3/20の国際幸福デー(International Day of Happiness)を日本中に広め、幸福について考え、感謝する日として定着させていく活動のひとつとして、「50か国をめぐって教えてもらった世界の幸せ」を発信してまいります(毎週1回/全8回予定:執筆者 幸せ冒険家 小泉大輔)。日本だけでなく、世界との関わりの中で、幸せについて考えていただく一助となれば幸いです。

国連が発表する「世界幸福度ランキング(ワールドハピネスレポート)」で、2017年の1位はノルウェーでした。そして2位デンマーク、3位アイスランドと続きます。では、日本はというと、なんと53位でした。でも本当に世界幸福度ランキングの上位国は幸せなのか、そして上位国はどうして幸せなのか。この連載では、世界50か国を旅して気づかされた幸せについてお伝えしたいと思います。

作家 村上春樹さんも、愛してやまないノルウェーのオスロ。昨年、ノルウェーのオスロに滞在し、現地のコーディネーターさんのご協力によって、現地で暮らす方々への幸せについてのインタビューさせていただきました。現地で活躍する日本人女性、公務員として働かれているノルウェー人の方、ノルウェー人の学生さん、また、ソマリアから移民された方などなど、様々な方々にご協力いただきました。

ノルウェーの幸福度の高さについて一般的に言われていることとしては、政府の福祉がかなり手厚く、医療費と教育費が原則無料だったり、男女平等の先進国であったり、格差があまりなく、家族との時間が大切にする、将来に対する不安がない、などが挙げられています(ちなみにマイケル・ムーアの映画「世界侵略のススメ」では、刑務所が天国であると紹介されています)。

インタビューでも一般論としては同様のことを皆さんおっしゃるのですが、その奥には、そのようなキーワードだけでは語りつくせない、悩みや葛藤を皆さんお持ちだということにも気づかされます。

一例をあげると、豊かさの根本には、古くから語り継がれる「ヤンテの文化」(自分の事を特別な存在だと思ってはならない)が根付いているといわれます。ただし、実際に現地の人たちに聞いてみるとと、そのように感じている人はごく一部であり、格差問題だって存在し、実際に広がっています。

また、自分のパーソナル・スペースを確保する傾向があるために、お互いを信頼するのにも時間がかかるといいます(フェースブックの友達申請も、数回会って初めて行うのが一般的です)。

もちろん政府への信頼は厚いものの、国を支える天然資源が今後どうなるか考えていくと、正直ベースでは将来について不安はないとは言い切れないそうです。

そのような中、ノルウェーの幸福度の高さにつながるキーワードを教えていただきました。ひとつはノルウェー語で「カルデモンメ」 といって、「他の人に迷惑をかけず、感じ良く親切でさえいれば、何をやってもいいよ」という意味の言葉。そして、もうひとつは「ソンナーデ」という言葉。これは「まぁそういうことだね。そんなもんだね」を意味します。

例えば、クレームをしたくなるような悪いサービスを受けた場合でも、この一言を言って受け入れるような、寛容さ、諦めの良さがあるそうです。つまり、過剰な期待をしない、何事も受け入れる、無駄なことにエネルギーを使わないという文化が根付き、ストレスを回避する能力がノルウェー人にはあるそうです。このようなストレスの少なさが、豊かさのベースにつながっているのではないでしょうか。

具体例を挙げてみましょう。ノルウェーは、世界バリスタ選手権で優勝者を何人も輩出するほどの有名なコーヒー大国でもあります。当然、おいしいコーヒーを飲むには行列になります。日本で朝の出勤前に、人気のカフェのコーヒーをどうしても飲みたくなったとします。でも、行列ができていて並ばなければならなかったら、時間が気になって、イライラしたりしませんか。しかし、ノルウェーでは時間を気にせず、バリスタは目の前の人のことだけを考え、また、コーヒーを待つお客様もそれを当然だと思い、イライラしないといいます。

この背景には、ノルウェーの人が「期待をしすぎない」ことが根付いているからだといいます。

日本では、ここまでやってもらって当然など、相手に対して求めすぎる傾向があると思います。もちろん、このことが、日本のサービスの良さ、おもてなしの文化にも繋がっていますが、その反面、不満が生まれやすいというデメリットもあるのではないでしょうか。

一方で、ノルウェーの人は、お互いに期待をしすぎない。もちろん、正直言ってサービスのレベルもそれほど高くないのですが、相手に期待をしない分、期待を少しでも上回ると皆、すごく感謝するそうです。このように、ノルウェーの人たちは、時間に追われることなく、今この瞬間を大事に生活しているところが、高い幸福度につながっているのではないかと思いました。

男女平等、働き方改革の最先端といわれ、時間が来たら仕事をきっちり終わらせ、家族との時間を大切にするノルウェー。それでも、日本の一人当たりGDPの2倍を稼ぎ、世界一幸せということについては、まだまだ疑問は尽きず、さらに研究したくなりますね。

(幸せ冒険家 小泉大輔)