HAPPY DAY PROJECTでは、3/20の国際幸福デー(International Day of Happiness)を日本中に広め、幸福について考え、感謝する日として定着させていく活動のひとつとして、「50か国をめぐって教えてもらった世界の幸せ」を発信してまいります(毎週1回/全8回予定:執筆者 幸せ冒険家 小泉大輔)。日本だけでなく、世界との関わりの中で、幸せについて考えていただく一助となれば幸いです。
国連が発表する「世界幸福度ランキング(ワールドハピネスレポート)」で、2017年の1位はノルウェーでした。そして2位デンマーク、3位アイスランドと続きます。では、日本はというと、なんと53位でした。でも本当に世界幸福度ランキングの上位国は幸せなのか、そして上位国はどうして幸せなのか。この連載では、世界50か国を旅して気づかされた幸せについてお伝えしたいと思います。
作家 村上春樹さんも、愛してやまないノルウェーのオスロ。昨年、ノルウェーのオスロに滞在し、現地のコーディネーターさんのご協力によって、現地で暮らす方々への幸せについてのインタビューさせていただきました。現地で活躍する日本人女性、公務員として働かれているノルウェー人の方、ノルウェー人の学生さん、また、ソマリアから移民された方などなど、様々な方々にご協力いただきました。
ノルウェーの幸福度の高さについて一般的に言われていることとしては、政府の福祉がかなり手厚く、医療費と教育費が原則無料だったり、男女平等の先進国であったり、格差があまりなく、家族との時間が大切にする、将来に対する不安がない、などが挙げられています(ちなみにマイケル・ムーアの映画「世界侵略のススメ」では、刑務所が天国であると紹介されています)。
インタビューでも一般論としては同様のことを皆さんおっしゃるのですが、その奥には、そのようなキーワードだけでは語りつくせない、悩みや葛藤を皆さんお持ちだということにも気づかされます。
一例をあげると、豊かさの根本には、古くから語り継がれる「ヤンテの文化」(自分の事を特別な存在だと思ってはならない)が根付いているといわれます。ただし、実際に現地の人たちに聞いてみるとと、そのように感じている人はごく一部であり、格差問題だって存在し、実際に広がっています。
また、自分のパーソナル・スペースを確保する傾向があるために、お互いを信頼するのにも時間がかかるといいます(フェースブックの友達申請も、数回会って初めて行うのが一般的です)。
もちろん政府への信頼は厚いものの、国を支える天然資源が今後どうなるか考えていくと、正直ベースでは将来について不安はないとは言い切れないそうです。
そのような中、ノルウェーの幸福度の高さにつながるキーワードを教えていただきました。ひとつはノルウェー語で「カルデモンメ」 といって、「他の人に迷惑をかけず、感じ良く親切でさえいれば、何をやってもいいよ」という意味の言葉。そして、もうひとつは「ソンナーデ」という言葉。これは「まぁそういうことだね。そんなもんだね」を意味します。
例えば、クレームをしたくなるような悪いサービスを受けた場合でも、この一言を言って受け入れるような、寛容さ、諦めの良さがあるそうです。つまり、過剰な期待をしない、何事も受け入れる、無駄なことにエネルギーを使わないという文化が根付き、ストレスを回避する能力がノルウェー人にはあるそうです。このようなストレスの少なさが、豊かさのベースにつながっているのではないでしょうか。
具体例を挙げてみましょう。ノルウェーは、世界バリスタ選手権で優勝者を何人も輩出するほどの有名なコーヒー大国でもあります。当然、おいしいコーヒーを飲むには行列になります。日本で朝の出勤前に、人気のカフェのコーヒーをどうしても飲みたくなったとします。でも、行列ができていて並ばなければならなかったら、時間が気になって、イライラしたりしませんか。しかし、ノルウェーでは時間を気にせず、バリスタは目の前の人のことだけを考え、また、コーヒーを待つお客様もそれを当然だと思い、イライラしないといいます。
この背景には、ノルウェーの人が「期待をしすぎない」ことが根付いているからだといいます。
日本では、ここまでやってもらって当然など、相手に対して求めすぎる傾向があると思います。もちろん、このことが、日本のサービスの良さ、おもてなしの文化にも繋がっていますが、その反面、不満が生まれやすいというデメリットもあるのではないでしょうか。
一方で、ノルウェーの人は、お互いに期待をしすぎない。もちろん、正直言ってサービスのレベルもそれほど高くないのですが、相手に期待をしない分、期待を少しでも上回ると皆、すごく感謝するそうです。このように、ノルウェーの人たちは、時間に追われることなく、今この瞬間を大事に生活しているところが、高い幸福度につながっているのではないかと思いました。
男女平等、働き方改革の最先端といわれ、時間が来たら仕事をきっちり終わらせ、家族との時間を大切にするノルウェー。それでも、日本の一人当たりGDPの2倍を稼ぎ、世界一幸せということについては、まだまだ疑問は尽きず、さらに研究したくなりますね。
(幸せ冒険家 小泉大輔)