第3回:恵まれていると思って楽観的に考える!(アイスランド編)

「50か国をめぐって教えてもらった世界の幸せ」では、ワールドハピネスレポート2017で第1位になったノルウェー、第2位になったデンマークの幸せについてお伝えしてきました。今回は、第3位となったアイスランドの幸せについてお伝えしたいと思います。驚くのは、アイスランドはリーマンショック後に経済破綻してしまったにもかかわらず、幸福度が高いというところ。これまでの北欧諸国とはまた異なる幸せがあるのではと思い、その秘密を探りたくて、アイスランドに訪問してきました。

アイスランド共和国は、ノルウェーの西約1000キロに位置する島で、北極圏に近い北緯65度くらいのところにあります。北海道より2割ほど大きい島にもかからず、人口はたった32万人。8世紀ごろに北欧のバイキング達によって発見され、たまたま発見したのが冬で、島全体が真っ白だったために、アイスランドと名付けられたそうです。

日本人にとっては、あまり馴染みがない国かもしれませんが、冷戦の終戦地となったのは実はアイスランドの首都レイキャビックです。1986年にソ連のゴルバチョフとアメリカのレーガン大統領が会談し、冷戦に終止符が打たれた平和の象徴の場所でもありますね。

そして、アイスランドは、NASAがかつて月面着陸の訓練をしたり、最近ではSF映画の撮影場所として注目されたり、まるで、別の星に来たかのような異次元の空間を思わせます。地球のマグマの噴出地点で至る所に温泉が湧き、世界最大といわれるブルーラグーンと呼ばれる温泉や、オーロラ鑑賞も体験できる好奇心を満たす国としても注目が集まる国です。疲れを癒し、エネルギーを充電するために、とっておきのふさわしい場所ですね。

高福祉国家のアイスランド

アイスランドも北欧諸国にみられるような、高福祉国家の特徴があり、医療費も無料、16歳までの義務教育期間の授業料も無料です。特徴的なのは、育児休暇が充実していること。法律によって、その期間は9か月と定められ、父親が3カ月、母親が3カ月、そして残り3か月を父親、母親のどちらかが選べるというユニークな制度が導入されています。仕事に拘束されず、家庭や自分の生活を優先できるようになっていますね。

一方で物価は高く、消費税は25.5%と、ハンガリーの27%に次いで、世界で2番目に高い国です。ペットボトルのお水は約400円、ワインは1杯約2000円もします。これまた、高福祉国家の特徴ですね。

その他、アイスランドがダントツにすごいなと思うのは、
・男性の平均寿命(81.2歳)は世界第1位(2015年)
・歴史上軍隊をもったことがない
・電力は100%クリーンエネルギーという実験国家
・治安がとてもよく、夜中に一人で女性が歩いていても、不審な人に襲われる心配もない
・政治家と国民の距離が近く、温泉で大臣と国民が直接話をすることもある
などなど、特徴的なところはありますが、その中で特に興味深いのは、最近発表された「世界・男女平等ランキング2017」で、アイスランドは9年連続男女平等世界一だということです(日本は144か国の中で114位)。女性の国会議員の人数も40%以上となり、さらにクォータ制という法律が導入され、50人以上の従業員がいる企業の女性比率を40%以上にしなければならないなど、女性の活用が推し進められています。

アイスランドの金融破綻

アイスランドの幸せについて考える上で、頭に入れておきたいのは、経済破綻を経験しているということです。

もともと、アイスランドの主要産業は漁業で男性社会でした。過去にオイルショックを経験し、苦しい状況から抜け出すのにとった国の戦略は、金融に力を入れるということでした。中央銀行が高い金利を設定し、その傘下の銀行が世界中からお金を集め、それによって住宅投資や建設投資を行い、アイスランドは高い成長率を実現しました。2008年には、一人当たりGDPは日本を抜き、世界でトップ4にもランクされるなど、小国ながら、パワフルな国に成長します。ところが米国の金融危機、リーマンショックがきっかけで、心配した預金者が一斉に資金を引き揚げ、2008年に金融破綻に追いやられました。

もともとアイスランドは、1980年代に世界で初めて民主的な投票によって女性首相が誕生するほどに進んだ国でしたが、男女平等世界一と言われるほど女性活用にシフトしたのは、経済破綻したことがきっかけです。というのは、アイスランド財政の破たんについて原因を調査したところ、大手三大銀行のトップが男性だったということが原因と結論付けられたのです。そして、この3つの銀行が国有化され、そのうちの2つの銀行のトップに女性が就任します。さらに、先ほどお伝えしたように、女性の国会議員が40%を占めるほどになり、また企業の女性比率を40%以上とするクォータ制度が導入されることつながります。

アイスランドの幸せ

このように高福祉が実現し、とくに男女平等が高いレベルで実現し、女性にとっても働きやすいなど、制度面からしても幸せ度が高くなる理由はわかるのですが、わからないのは、税金も生活コストも高く、さらには経済破綻したにも関わらず、なぜ幸せなのか、ということです。

ありがたいことに、アイスランドの方々にインタビューさせていただく機会をいただきした。

共通するところとしては、皆、破綻してしまったことに悲観していないということ。中には、破綻後に住宅ローンが3倍にもなり、多額の負債を抱えてしまった方もおりました。その方でさえも、「正直それほど楽とは言えないが、過去を振り返ってもしょうがない。経済破綻を通じていろいろと学べたし、きっとこれから良くなるよ」と前向きです。

いろいろとインタビューさせていただく中、帰国が迫る1月1日に、大きな出会いがありました。

そろそろ夕食にでかけてようと出かけようと、雪の中バスを待っていた時のこと。雪が降り気温は氷点下の中、いくら待っていてもバスどころか車も一台も通り過ぎません。20分ぐらいが過ぎ、途方に暮れていると、僕の目の前に1台の車が近寄り、停車しました。そして窓が開き、20代ぐらいの若い女性が顔を出し、運転席から話しかけてきました。

「今日は、いくら待ってもバスは来ないわよ。おそらくタクシーも。町の方に向かうのだったら乗っけて行くわよ!」と。女性一人で、見知らぬ男性一人を乗せることなど日本では考えられません。とても親切な女性に感激しました。

聞くところによると、彼女は、プロのクラシック音楽のミュージシャンで、家に帰る途中ということでした。乗せていただけるだけで感謝なのですが、どうしてもこの親切な女性に幸せについて伺いたくなりました。

彼女のお話では、親戚がドイツに住んでいるようで、いろいろとヨーロッパの国の情報が彼女の耳に入ってくるらしく非常に国際情勢に明るい。

「ドイツにしたってイギリスにしたって、どこの国もいろいろな問題を抱えているでしょ。生活するにも大変そうだし。アイスランドは経済的にも厳しい状況を迎えたけど、私たちは、他の国に比べればまだましだと思う。それに、将来のこと心配してもしょうがないでしょ。今、私はとても充実しているし、幸せよ」と。

通常、比べることで幸せでなくなってしまうことが多いと思うのですが、経済破綻を経験したアイスランドでは、悲観することなく、他の国と比べても自分たちは恵まれていると、前向きに考える。そのようなものの見方が幸せにつながるんだということに気づかされました。

アイスランド人の深いところには「自然に逆らわず生きる」という意識があるようです。雨が降っても、濡れるのは当たり前という考えで、傘をささなかったり、また、火山の噴火で飛行機が欠航しても、怒りもせずに次の便を平気で待つそうです。それは、幼い時期から、自然に逆らうより自然になれることを体に教え込まれて育つからなのだそうです。

アイスランドでは、地理的に夏は白夜でなかなか暗くならないため、1日中アウトドアライフを楽しみます。日照時間が短い冬には、部屋で仲間と面白い話を競い合って盛りあがったり、また、読書を過ごして過ごすの一般的なライフスタイルだそうです(10人に1人が自叙伝を書き、本屋さんには一般の人が書いた自叙伝が平積みになるそうです)。

このように、自然に逆らわず生きる、そして、一見すると、マイナスやネガティブな事柄に遭遇しても、恵まれていると楽観的に考える。そんな知恵がある人々が住むのがアイスランドなんだなぁと思いました。

(幸せ冒険家 小泉大輔)