第4回:つらいことがあっても気にしないタフなメンタル(イスラエル編)

今まで、ワールドハピネスレポートの上位にランキングされている北欧の国々を見てきましたが、北欧以外でも興味深い国がランキングされていることに気づきました。その中でも特に気になるのが中東のイスラエルです(2017年は11位にランキングされています)。イスラエルというと、パレスチナ問題や中東地域での紛争などがメディアで報道され、幸せとはちょっと縁遠いのでは、と思ってしまいます。とくに昨年末は、米国のトランプ大統領が首都をエルサレムと認定したこともあり、現地の混乱が毎日のように報道され話題になりました。イスラエルは本当に幸せなのか? 是非、イスラエルの幸せについて生の声を聴いてみたいと思い、昨年末イスラエルに向かいました。

イスラエルは、日本の四国よりやや大きい面積に人口約800万人が暮らし、人口構成はユダヤ人が75%、アラブ人が20%、その他5%となっています。また、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教の3大宗教にとっての聖地である東エルサレムやヨルダン川西岸地域、それにガザ地区をめぐっては、いわゆるパレスチナ問題を抱えています。

地理的には中東に位置しますが天然資源に乏しく、サウジアラビア、イラン、イラクなどと異なり、産油国ではありません。イスラエルの資源は、まさに人です。物理学者のアインシュタイン、映画監督スピルバーグ、ミュージシャンのボブ・ディラン、ヘッジファンドのジョージ・ソロス、資本論のマルクス、心理学者のフロイトなどなど、各界で活躍しているユダヤ人は多いですね。

また、国民一人当たりのノーベル賞科学3賞授賞者数、博士号保有者数、研究開発費、ベンチャー企業数などは世界トップクラスで、ドローンやサイバーセキュリティ、自動運転技術も、イスラエル発の技術を目当てにアップル、グーグル、マイクロソフトなどがこぞって進出するほどの魅力的な国です。経済成長も著しく、1人当たりGDP(国内総生産)では、2014年以降日本を上回っています。

イスラエルはなぜ幸せか?

一方で物価は非常に高く、消費税は17%です。日本以上に格差は広がっており、ユダヤ人とアラブ人の緊張関係と合わせて、一見すると、決して幸せとは言えないように見えます。

そのような状況なのに、幸福なのはなぜでしょうか? イスラエルに行き、その現状を見ながら、現地に長年住んでいる方々にお話を伺う事ができました。どうやら、そこには、ユダヤの歴史的な背景や、国の教育方針が深くかかわっているようです。

歴史的な背景

ユダヤ人は、2000年前にローマ帝国に支配され、国を失いました。そして、この2000年もの間、行き場を失い、迫害を受け続けてきました。その後、自分たちの王国があったところに国を復活させたいという祖国への希望を持ち続けている中、やっとのことで1948年にイスラエルが建国されます。このように、苦しい中で耐え続けた歴史から、基本的に期待をあまりしない、そして辛いことがあってもちょっとやそっとでは、落ち込まないタフさがあります(自殺率もほぼゼロだそうです)。

ヘブライ語に「フツパー」という言葉があるのですが、この意味は「図々しく、無神経、厚かましい、信じられないほどの度胸、恐るべき根性、無遠慮で傲慢」だそうです。長年祖国がない中で生き抜くために鍛えられた、ユダヤ人の特徴だといいます。

実際ユダヤ人と話をしていると、相手にうるさがられるほど積極的に自己主張します。日本人のように素直に相手の話を聞いて納得するすることはまずなく、話の最中でも平気でさえぎって質問したり、自分の話を始めたりするなど、メンタルもかなりタフと感じられます。

このため、通常の人が苦しいと思う事にも苦しみを感じにくく、まるでゴムのように、何を言っても動じないタイプの人が多いといいます。だからこそ幸せを感じやすいのだそうです。

さらに、現地の人のお話では、今まで国を持てなかったところから持てたという喜びと安心感、そして、苦しい中をともに生き抜いてきた同志として、世界中で離れて活躍しているユダヤ人同士の結束力の強さも、幸せ感につながっているようです。

イスラエルの教育

もう一つの要因は教育です。苦しい中でどのように生きていくかを学んだ国だけに、国も「自主自立」、「失敗を恐れず変革を続ける」というビジョンを掲げ、教育に力を入れてます。そして、ユダヤ人の家庭はみな教育熱心だそうです。

イスラエルの教育の方針のキーワードは、「何とかなる」「できないはずがない」「失敗に対する寛容さ」「楽観主義」だそうです。小さい時から執拗に「なぜ?」を連発し、なんでも質問する文化で、子供を徹底的にほめ、叱らないそうです。

このような教育スタイルから、なんとかやれるという強いマインドが磨かれ、将来に対する不安を感じにくいのではないかと思いました。

帰国の直前に、幸せに関するもう一つ大事なヒントを発見しました。それは、3.1という高い出生率です(日本は1.44)。この出生率の高さの理由には、ユダヤ人が子孫繁栄してゆく家族を築くことをとても重視しており、家族が仕事よりずっと大切だと考える人が多いことを表しているといいます。実際、安息日には家族で過ごすことが多いため、日本人とは比較にならないほど夫婦や家族で過ごす時間が長いそうです。

イスラエルが幸せな理由を探していて見つけた、「何とかなる」「できないはずがない」というキーワード。そこには、日本人の特長といわれる「協調性」「謙虚」「規則を守る」などの言葉は見当たりません。それはまさに、厳しい中を耐え抜くための知恵でもあったと気づかされました。

繊細で、小さなことを気にしてしまいがちな日本人からすると、別次元の話に聞こえるかもしれませんが、最近注目されているアドラー心理学にあるように「嫌われる勇気」が、幸せに生きるための一つのヒントなのかもしれませんね。

現地に来て初めて、気づかされる幸福感でした。

(幸せ冒険家 小泉大輔)