第6回:月曜日が楽しみになる幸せな会社(ブラジル&アメリカ編)

これまで「50か国をめぐって教えてもらった世界の幸せ」では、さまざまな国の幸せの考え方についてお伝えしてきました。今回は、視点を変えて、働くことにフォーカスして幸せを考えてみたいと思います。人生のおよそ30~50%は働く時間だといわれています。となると、働いている時間が幸せであれば、人生がもっと幸せになりそうですよね。

世界中を旅するときには、機会があれば幸せな会社をいろいろ訪問させていただいているのですが、その際に、別の幸せな会社があると教えていただくことがあります。ということで、今回は世界をめぐって教えていただいたり、また、実際に訪問させていただいた「幸せな会社」についてお伝えしたいと思います。

セムコ社

1社目は、リカルド・セムラーが代表をつとめるブラジルの会社、セムコ社です。TEDでの講演「(ほぼ)ルール無しで会社を経営する方法」が話題になったり、また『奇跡の経営』という本もベストセラーとなったので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

セムコ社は、現在、売上高約2億ドル、従業員約3,000人規模のコングロマリット企業です。その革新的な経営方針と経営手法でユニークな経営を実践し、ブラジルの学生が就職したいランキングNo.1に選ばれるほどの人気の会社です。これほどまでにセムコ社が注目され、奇跡の経営を実現しているといわれるかというと、それは次のような会社の特徴にあるようです。

・組織図がない
・企業戦略もなく、ビジネスプランもない
・就業規則、業務標準など細かなルールはない
・仕事のやり方、責任範囲は、社員が自分で決め、監視、監督、管理されない
・日常の仕事の意思決定は社員のレベルで自主的に行われ、大きな経営判断は、社員が参加する工場委員会で投票により決定される

とにかく、社員を信じ、とことん、社員に任せる。

そして、決算書を含む会社の数字はすべて全社員に公開され、儲かった利益については経営サイドと従業員が協議して決定された配分額が社員に還元されます(プロフィット・シェア)。さらに驚くのは、自分の給与も社員が自己申告で決めてしまうほどにオープンな組織なんです。

そして何より、社員皆さんは毎日会社に行くのが楽しみだというのです。

このように、従来の会社の概念を超えるようなユニークな働き方が実現できるのは、代表のリカルド・セムラー氏の「会社で働く」ことに関する考え方の素晴らしさにあると思います。

「一週間のうち、5日間会社で働く。その5日間が苦痛で疲れ果ててしまう場所であってはならない。苦痛である5日間に備えるために、週末の2日間でエネルギーを充電し、活力を取り戻すというのは、人間が本当に望んでいることではないはず。仕事をするのも、週末と同様に社員が心から望むことであって、働けば働くほど元氣が出てくる、そういった休日のように充実した日々であるのが本来のはずだ。」

毎日が、週末のような夢の会社だったら、働くのが楽しくなりますよね。

コーオウンド会社

世界には、まだまだ幸せな会社はたくさんあります。今から5年ほど前、私の親友に、アメリカやイギリスに社員が皆笑顔で幸せな会社の形態があるということを聞きました。この会社の形態は、日本ではまだほとんど知られていないのですが、アメリカやイギリスでは、すでに一つの潮流となっているコーオウンド・ビジネスと呼ばれる形態です。

コーオウンド・ビジネスは、創業者と社員が共同で会社を所有し、社員に影響株主になってもらうモデルです。このモデルの特徴は、社員の参画意識が高く、社員の離職率も低く、そして競争意識は薄く、お互い助け合う意識が醸成され、他社よりも高い生産性と利益を実現しているところです。

正直、欧米というと、競争意識が激しいというイメージだったので、信じられなかったのですが、実際に訪問させていただき、衝撃を受けました。それからこの5年間、その魅力に魅せられて、毎年そのメッカであるアメリカやイギリスを訪問させていただいております。

実際に訪問した会社を1社ご紹介します。

こちらの会社は、アスリートの方には大人気のオーガニックのエナジーバー(栄養補給食品)であるクリフ・バーを製造販売する、米国の西海岸バークレーに本社を置く、クリフ・バー&カンパニーという会社です。クリフ・バーは厳選した自然素材を使用し、エネルギー補給に最適な栄養素をブレンドした、タフなアスリートには、欠かせないエナジー・バーです。

この会社がユニークなのは、

・社員の机の上には、自転車か、カヌーなどがぶら下がって、職場の環境に遊び心いっぱい
・めちゃめちゃおいしいオーガニック・レストランが社内にあり、就業時間中に無料で利用可能
・社内にはフィットネスジム、ボルダリングジム、瞑想ルームなどがあり業務時間に利用できる
・無料託児所も充実
・社員の勤務は隔週で週休3日で、12月は25日から正月まで会社を閉じる。さらに長期休暇を付与するサバティカル制度を設けており、社員は7年ごとに3か月の有給休暇を得る(希望すればサバティカルをさらに3か月無給で延長し、半年休むことも可能)
・ボランティアに携わる合計時間が年間2,080時間となることを目標としており、業務時間を使ってボランティアに参加することができる
・業績も非常に好調で、従業員に公平に儲かった利益が還元される仕組み(プロフィット・シェア)もある

メディア等からも注目され、フォーチュン誌の「グレイト・プレイス・トゥ・ワーク(Best Medium Workplaces部門)」ベスト20の常連となってます。

私たちが訪問させていただいた際もちょうど採用募集をされていたのですが、人事担当の方のお話では、一人の求人枠に対して3千人の応募があったそうです。

訪問して感じるのは、ほんとに皆笑顔で、イキイキとして楽しそうで、まるで、文化祭のイベントに参加しているような感じがします。そして、いろいろとインタビューさせていただくと、月曜日に会社に行くのが楽しみだと答えが返ってきます。

ご紹介した幸せな会社の共通点を分析してみると、大きく3つのことに気づきます。

1つ目は、皆さん一人一人が自分たちの会社だという意識が強いということ。そこには「やらされ感」というものが全くなく、会社のオーナーシップの意識が高く、自分で考え行動する。そして高いレベルでそのような文化が醸成されています。

2つ目は、透明性が高いということ。会社の方針や財務情報も含めて、全社員にオープンです。そしてトップと社員の関係は、オープンドアといって、すごく近い関係にあります。

3つ目は、儲かった利益が社員に公平に還元される仕組み(プロフィット・シェア)があり、また、その方程式・計算式もオープンにされていること。

このような共通点が社内の垣根をなくし、お互いの信頼関係が厚い、幸せな会社になるんですね。

競争競争で厳しい経済環境の中で会社に行くのが憂鬱と感じたり、また疲れ切っている人が多いという日本の実態は、非常に残念です。今回ご紹介した、月曜日に会社に行くのが楽しみになるような、幸せな会社が1社でも増えれば、日本の幸福度はもっと高くなるのではないかと思います。

(幸せ冒険家 小泉大輔)