第7回:幸せの法則と幸せの方程式(東アジア編)

世界中を巡って現地の方々のお話を伺っていると、本当にいろいろな形の幸せがあることを実感します。そして、さらに探求してみたくなるのは、いろいろな形の幸せに法則や方程式のようなものがあるのかということです。ということで、今回は世界中をめぐって教えていただいた興味深い幸せの法則、そして、私自身が気づいた幸せの法則についてお伝えしたいと思います。まずは世界中の学者の方々が研究している幸せについて少し見てみたいと思います。

サピエンス全史

世界48か国で200万部以上を売り上げるベストセラー『サピエンス全史』。昨年、日本でもベストセラーになったのでご存知の方も多いかと思います。著者はイスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリさん。人類250万年の歴史を全く新しい切り口で解釈している素晴らしい本です。この本の中で「農業革命で人類が農耕・牧畜の手法を習得したとき、周囲の環境を整える、集団としての能力は増大したが、多くの人間にとって、個人としての運命はより過酷になった」と分析し、文明の発展が必ずしも幸せにつながっていないことを問題提起してます。たしかに豊かになった一方で、逆に奪われてしまったものもたくさんあるように感じます。では、豊かになった側面の象徴であるお金と幸せはどのような関係があるのでしょうか?

お金や物質的な豊かさと幸せの関係について

お金と幸せの関係で有名な研究は、2010年のダニエル・カーネマン氏(ノーベル経済学賞受賞)の調査です。彼の研究では、米国では年収が7万5千ドルを超えると「幸福感」はあまり増えなくなるということがわかりました。そして、年収が増えれば増えるほどのその幸せ度の差が小さくなることもデータもあるようです。またハーバード大学の元学長のデレック・ボック氏の研究調査では、「この50年間の米国の一人当たり所得は増大しているものの、幸福度の平均水準は全く変わっていない」として、経済的・物質的な豊かさを追求しても、幸せは長続きしないことが報告されました。さらに、ハーバード大学を卒業したカルフォルニア大学心理学教授のソニア・リュボミアスキー氏によれば、「物質的な豊さに強く憧れ、金儲けを第一目標と答えた学生たちは20年後、人生の満足度が下がり、精神疾患に悩む人が多い」という報告もあります。

以前、宝くじ当選者のその後を追った方のお話を聞いたことがあるのですが、「幸せになった人はごく一部で、ほとんどの人が不幸になっている」とのことで、ある程度のお金は必要だとしても、たくさんあるからといって必ずしも幸せは実現できないことに気づかされます。では、どうしたら、幸せになれるのでしょうか?

心理学者のティム・カッサー氏によれば、「時間的豊かさが常に幸せに直結している一方、物質的な豊かさはそうではない」といいます。また、ハーバード大学医学部臨床教授のロバート・ウォールディンガー氏のTEDの講演「史上最長の研究が明かす 幸福な人生の秘密」によれば、700人を75年間追跡した研究から、「幸せな人生を送る秘訣」は、「よい人間関係」にあることがわかました。そして、その人間関係は、つながる数より自分自身が「つながっていると感じるかどうか」が重要だといいます。

さらに、ドイツのリューベック大学をはじめとする国際的研究チームによる、「気前の良い行動を取った被験者と幸せの関係」の実験を行ったところ、金額とは関係なく「与えることが幸せにつながる」ことがわかりました。

このように、目に見える物質的なもの以上に、目に見れないものと、幸せとに相関関係があることがわかってきてるんですね。

幸せの法則

世界を旅する中、ある方から、非常にユニークな幸せの法則について教えていただく機会がありました。幸せは、次のような方程式で表されるというのです。

      財
幸せ = ―――
       欲望

この方程式からわかることは、分子の「財」を多くすることで幸せは大きくなり、また分母の「欲望」を小さくすることで幸せが大きくなるということです。そして、彼の話では分母である「財」、分子である「欲望」の因子は国民性や人の性格によって異なるようで、分子である「財」を増やすことで幸せを感じやすいタイプの国や人がいる一方で、逆に欲望を少なくすることで、幸せを感じやすいタイプの国や人もいるようです。

どうやら、東アジアなど仏教の影響を受けている国では、「財」を増やすよりも、「欲望」を小さくすることでも幸せが大きくなる傾向があるようです。「足るを知る」という言葉にあるように、手に入っていないものを探すよりも、既に手に入れている、恵まれているものに幸せを感じ、感謝する。このように、「欲望」を小さくすることの幸せは、東アジアをはじめ、特に、日本人にマッチするのではないかと思います。

最後に私が発見した「幸せの法則」をご紹介させて下さい。僕自身、20年ぐらい前から習慣づけていることがあります。それは、「ついてるリスト・ついていないリスト」に記録するということです。パソコンで、エクセルシートに日付と「ついている・ついていない」出来事を日々記録しているんです。最初は、もしかしたら、「ついていること」と「ついていないこと」に、統計的に面白いことが見えてくるのではないかという面白半分で記録していたのですが、20年ぐらい継続してみて、ある法則があることに気づきました。

それは、凹むこと、つらい出来事に遭遇すると、その時は「ついていないリスト」に記録するのですが、ある程度時間が経過して振り返ると、当時“「ついていない」と思っていたことが、「ついているリスト」に転記されることが多いことに気づきました。

その時は感情的にマイナスになることも、長期で考えるとプラスになり、結果、幸せを感じられるようになるんですね。ショックなことも、見方が変われば、自分自身の考え方も変わるんだなぁと気づかされました。そう考えると、いい悪いは、勝手に自分で判断してしまっており、そもそもいい悪いというものはないのではととも思います。特に、時間軸によって、幸せ感が変化するということを実感できたのが、大きな発見でした。

そういえば、テニスの錦織圭選手が、2010年の手術後に復帰した後に、こんなことを言ってましたね。

「過去のことを振り返ってばかりいましたが、ふと目の前の目標に集中したら、いやなことは消えてしまいました。」

不安なことや、凹むことがあったとしても、長い目でみたら解決していると切り替えて、気持ちを切り替え、「今ここ」を楽しむのが、幸せの秘訣かもしれませんね!

(幸せ冒険家 小泉大輔)