第1回:星の王子さまに学ぶ幸せのヒント(モロッコ編)

2012年に国連が制定した「International Day of Happiness(国際幸福デー)」を少しでも多くの方に伝えたいという想いから、2019年3月17日に幸福について考えるイベント「国際幸福芸術祭」が開催されます。この芸術祭は、様々なタイプのアートを体験することにより、誰もが自分らしく創造的な活動を行って幸せになれることを体感していただくことを目的とするフェスティバルです。

国連では毎年、「世界幸福度ランキング(ワールドハピネスレポート)」が発表されます。2018年の1位はフィンランド、そして、2位ノルウェー、3位デンマークと北欧諸国が続きます。では、日本は、というと54位でした。でも、本当に、世界幸福度ランキングの上位国は幸せなのか、そして、上位国は、どうして幸せなのか。世界50か国を旅して、いろいろと気づかされた幸せについて、お伝えしたいと思います。

(過去のコラムは、こちらをご参照ください)

とってもアートなモロッコ

今回ご紹介する国は、2018年末に訪れたモロッコです。モロッコは、アフリカ大陸の一番左上に位置する国で、スペインからは高速船で1時間ほど。ヨーロッパからアフリカへのゲートウェイでもあり、モロッコ文化と異文化が混ざり合い、常に変化し続け、人も自然もパラフルで、エネルギーにあふれる国です。

実際に訪れて感じるのは、とにかく色彩が豊かでとてもアートな国だということ。街全体が、青のグラデュエーションで彩られるシャウエン。最もエネルギッシュなマラケシュは、先住民のベルベル語で「神の国」を表し、レッドシティーと言わるぐらいに赤茶色一色。スーク(市場)では、カラフルな雑貨が並び、街全体がアート。

また、モロッコには、外国人デザイナーや、アーティストが多く暮らし、モロッコをこよなく愛するフランスのデザイナーの故イヴ・サンローランは、ジョレル庭園を購入してしまうほど。その庭園に建つ家は、マジョレル・ブルーと呼ばれる鮮やかな青でペイントされ、まさに現代アート。

星の王子さまに学ぶ幸せのヒント

モロッコというと、映画「カサブランカ」、世界遺産のアイトベンハドゥなどが有名ですが、僕の中で、モロッコと聞いてすぐに浮かぶは、サン=テグジュペリ(~1944年)作の「星の王子さま」です。

「星の王子さま」は、昔はこどもだった筈なのに大人になってしまった「僕」と自分の星に咲く1輪のバラの花と喧嘩して、バラを残し地球に降り立った「星の王子さま」がモロッコのサハラ砂漠で出会うお話です。

モロッコ人達に、星の王子さまの話をすると、皆さん幼い頃に読んだ記憶があるようで、

「舞台は、サハラ砂漠だし、僕らはみな知っているよ。とっても大切なメッセージが書かれているよね。」と盛り上がります。

特に、印象的なのは、王子さまが、狐(きつね)と出会って、狐からとても大切なことを学ぶシーンです。

「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目にはみえないんだよ。」

「あんたが、あんたのバラの花をとても大切に思っているのはね、そのバラの花のために、暇つぶししたからだよ」

「にんげんっていうものは、この大切なことを忘れているんだよ。だけど、あんたは、このことを忘れちゃいけない。めんどうみたあいてには、いつまでも責任があるんだ。まもらなけりゃならないだよ、バラの花との約束はね……」

幸せの理由

世界幸福度のランキングでは、85位と低いですが、でもアフリカ大陸の中では、84位の隣国のアルジェリアと並んで、幸福度が高いです。

アフリカ大陸の中でも幸福度が高い理由を現地の人に尋ねてみると、いくつか興味深い答えが返ってきました。

「モロッコ人が海外に行こうと思っても、海外にいくためのビザを取得することがなかなか難しい。海外に行こうと思っても、簡単に行けないため、海外には目を向けず、自分の国にフォーカスする。だから、他人の目を気にしない環境で育ってきたんだ。」

「先住民のベルベル人は、遊牧人で古くから“自由の民”と呼ばれていた。僕らには、そのDNAが受け継がれている」

「国民のほとんどがスンニ派のイスラム教徒、でも、信仰の自由があり、束縛されることはないんだ」

とくに、今回の旅で、僕がご一緒したモロッコ人から感じたことは、自分のことよりも、相手のこと、ゲストのことを第一に考えるという利他の精神があり、とても優しい方達だったこと。また、仕事に対しても、“いい仕事をすれば、ちゃんとお金が入ってくる”という前向きな価値観をもっているということを感じました。

また、1999年に即位した王様のムハンマド6世は、移動には、公共交通機関を使ったり、自分で車を運転して小さな村に視察するほどの身近な存在で、権威をひけらかすのでなく、国民のためにトップは働くということを実践し、国民からもリスペクトされ、国に対する信頼感が高いところにも、幸福感につながるのではないかと思いまいした。

でも、今回の旅で、一番の印象に残ったのは、現地の方々と星の王子さまの話をシェアできたことです。

ついつい大人になって忘れがちな夢を抱き続けること、諦めないこと、人間同士の絆を大切にすること、そして、心で見なくちゃ、かんじんなことは、目にはみえない……。モロッコ人たちとの対話を通じて、幸せの本質・ヒントを学びました。

(幸せ冒険家 小泉大輔)