第2回:古代文明に学ぶ幸せのヒント(エジプト編)

前回のモロッコに引き続き、アフリカ大陸から、今回は、エジプトで発見した幸せをご紹介します。エジプトは、中東とアフリカ大陸を結ぶ国で、国の中央を世界一の長さを誇る6,650キロのナイル川(アマゾン川は、6,516キロで世界で2番目)が流れます。

最も有名なのは、カイロにある約4,500年前に建造されたクフ王の大ピラミッドやスフィンクスかと思いますが、ルクソールのルクソール神殿、カルナック神殿、また、建築王ラメセス2世が約3,000年前に自己顕示欲から建造させたという、巨大岩窟神殿のアブシンベル大神殿など、どれもその一つ一つが巨大で迫力があり、古代から文明が栄えていた歴史と、アートなエジプトを感じます。

ピラミッドが何のために、そして、どのようにできた。幼い頃読んだ本では、ピラミッドは、たくさんの奴隷が働かされて作られたと記憶していていたのですが、現地の研究者方々の人に聞いてみると、今では、奴隷説は否定され、一番有力なのは、公共事業説だそうです。当時は、ナイル川が氾濫することが多く、そのたびに、農業ができなり、多くの人が仕事を失い、その失業対策で、クフ王が、自身のお墓として、ピラミッドを建設させたそうです。

なぜなら、もし、ピラミッドを奴隷の人々が働かされて作っていたら、やらされ感が強くなり、こんなにも精密精巧にはできなかったというのです。だから、これほどまでにすごいものができたのは、国民がクフ王大好きで喜んでピラミッドを作ったからだというのです。クフ王のリーダーとしての器、人を惚れさせるような人間力が備わっており、国民も幸せだったというのが、通説だそうです。

もう一つ、古代エジプト人の幸せについて、エジプト考古学研究の吉村作治さんが書いたコラムを思い出しました。それは「古代エジプト人は、食べられるだけ、ビールを飲めるだけで幸せだった」ということ。

とくに、古代のエジプト人が一番幸せを感じたのは、食事の時だったそうです。それは、自然から、神の恵みを授かっているという実感があったからだということ。

食べたものをうまいまずいだけで評価するのは現代人とは対照的で、恵まれた国にいることが当たり前になると鈍感になってしまって、幸せであることも実感できなくなってしまうなぁ、と感じました。

同行したエジプト人から学ぶ幸せ

一方で現代のエジプト人の幸せはというと、幸福度の世界ランキングでは122位とかなりかなり下位と感じます。気づかされるのは、社会的な様々な問題は抱えている中で、実は「精神的な面ではHappy」であるということ。

今回のエジプト訪問にあたって、日本が大好きなカイロ大学のモハメッド先生にアテンドしていただき、また、現地のエジプト人もたくさん紹介していただきました。お会いしたエジプト人に共通して感じるのは、とにかく、自分のこと以上に、相手のことを考える、ギブの精神であふれているということ。

いろいろとお話を伺って分かったのは、近隣のアフリカ・中東の国々と比べて、エジプト人は情が厚く、怒らない、イライラしない。それに気が長いのが特徴のようです。

とくに、エジプトの旅を終始ご一緒したモハメッド先生から、「因果応報」が座右の銘だと聞いた時には、驚きました。

正直、エジプトは、発展途上、失業率も高く、所得格差も大きく、しかも、政府の機能有効性も低い(エジプト148位、日本15位)中で、

「人に良くしていれば、きっと、いつかは、自分に巡り巡ってくる」ということを信じているという話を聞いたことはとても衝撃的でした。

オリンピック選手から学ぶ幸せ

そして、モハメッド先生の友人でもあり、日本人にとってもなじみがある有名なエジプト人の話で盛り上がりました。

ご記憶にある方も多いかと思いますが、それは、1984年のロサンゼルス・オリンピックの柔道無差別級決勝で、日本代表の山下泰裕選手と戦ったエジプト代表のモハメド・ラシュワンさんです。

山下選手は2回戦の試合中に右足ふくらはぎに肉離れし、足を引きずる状態でむかえた決勝。エジプトのラシュワン選手は、山下選手の右足を狙ったら、簡単に勝てたかもしれないのに、あえて、卑怯なまねをせず、正々堂々と戦いました。

結果としては、横四方固めで山下選手の一本勝ちで、金メダルを取ったのですが、その後も、山下選手が表彰台に上がろうとした時にラシュワン選手が手を貸した姿を思い出しました。

結果、ラシュワン選手は、ユネスコのフェアプレー賞を受賞し、世界からも賞賛の声があがりました。そして、今では、二人は、親友になったそうです。

ギブの精神、そして因果応報の考え方は、幸せにつながる。エジプト人から、大切なことを学ばせていただきました。                            

(幸せ冒険家 小泉大輔)